1、慎重審議の必要性
児童ポルノの撲滅が国際的な重要課題となるなかで、日本においても児童ポルノ禁止法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律)を改正して、児童への性的虐待を防止することが強く求められている。しかし、児童ポルノの取り締まり強化が、運用次第で表現の自由を侵害するおそれも指摘されていることから、法律の改正にあたっては慎重な対応が求められる。旧与党案(自公案)をベースとした児童ポルノ禁止法改正案(修正案)には、いまだ疑問点が残り、社民党としてはこれを委員会審査を省略して拙速に成立させることには同意できない。改正論議の開始当初とは政治状況も大きく変わっており、当初の民主党案をベースに内閣提出法案とすることを検討すべきである。
2、定義の明確化・用語の改正等
いわゆる「3号ポルノ」の定義を明確化(改正案第2条3関係)することは評価できるが、「性的な部位」としてあらたに「臀部」や「胸部」を加えるなど規制対象の範囲を広げていることには疑問がある。「性欲」というごく主観的な内容に関するものであるから可能な限り限定的に規定するべきではないか。例えば学術的・芸術的・文化的な価値のあるものを除外することを明記するなど、実態に即してより明確な規定とするべきである。
3、所持の禁止規程等の新設
児童ポルノ等を所持・保管した者に対する罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が新設(改正案第7条関係)されているが、捜査当局による恣意的な運用によって表現の自由が侵されるおそれがいぜん否定できない。修正によって「自己の意思に基づいて保管するに至った者」、「当該者であることが明らかに認められる者」に限定するなど、実質的に「取得罪」とほぼ同様の立証が課されることとなったことは評価できるが、民主党案が当初規定(民主党案第7条)していた「有償」や「反復」といった要件を加えることがより望ましいのではないか。
4、被害児童の保護に関する制度の充実・強化
被害児童の保護のための措置を講ずる主体や責任の所在を明確化し、被害児童の保護に関する施策や、フォローアップ体制を強化(改正案第3章関係)することは評価できる。改正案は関係行政機関の規定について社会保障審議会、犯罪被害者等施策推進会議が連携して検証・評価を行なうこととしているが、具体的な連携のあり方等について所管庁間の対応について確認し、具体的な認識を共有しておく必要がある。
5、インターネットの利用に関わる事業者の努力規定
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